おめでたいといわれる鯛の豆知識

鯛はめでたい魚

鯛という魚は昔からおめでたい魚と言われていて、現代でもおめでたい時に食べられる魚です。江戸時代ごろには既に珍重され、高級魚として殿様や将軍の食卓にも上がっていたとされます。七福神の布袋様が釣竿と一緒にぶら下げているのも大きな鯛ですね。

実際に語呂合わせの「めでたい」だけではなく、味もおいしく、様々な調理法で調理されています。実は「タイ」とつく魚は実に200種類以上も存在しています。ですが、そのすべてが実際にタイと同じ種かというとそうではなく、ただ単に白身魚で、なおかつ赤い体をしているもの魚にタイとつく名前を付けただけのものもいます。そのようなものは「肖りダイ」などと言われることもありますが、それだけ名前が付けられるほど鯛は人々の憧れだったのでしょう。
ちなみに鯛は日本以外ではあまり珍重されているものではないそうです。もともとあまり魚を食べる風習のない欧米ではもちろん、中国でもあまり良いイメージのない魚なんだそうです。

それではなぜ日本ではめでたいイメージがあるのかというと、それはまず第一に文化の影響のようです。日本では赤はめでたい色として現代も使われていますし、昔からやはりめでたい色とされてきました。そのため体の色が赤い鯛はそれだけでおめでたい雰囲気をしているのです。また日本は俳句などでも行われる「掛詞」のようなごろ合わせともいえる言葉遊びが多く、それは江戸時代などでも変わらず残っていました。そこで「めでたい」と「鯛」のごろ合わせから、めでたいことにあやかって鯛が好まれるようになったのです。
またお祝い事では尾頭付きの鯛を食べることがよくありますが、これは鯛がおめでたいものだからというだけではなく、「尾頭付き」という状態の魚が「かけた部分のない、完璧な」姿であることから、祝い事にふさわしいとされ、なおかつ鯛は焼いても形が崩れにくいという実用性も含めて尾頭付きの鯛が祝い事によく使われるようになったそうです。
さらに、意外と知られていないことですが、鯛の骨は古墳や貝塚の中から発見されることも多く、縄文時代ごろから頻繁に食されていたそうです。

このように鯛は昔から日本人の食生活や文化に寄り添ってきた魚なのです。

では鯛の特徴と言ったらなんだろう、という話をしますが、やはり鯛の特徴の中で大きいものは、その体の赤さです。桜鯛、と呼ばれる旬に取れた真鯛は皮だけではなくさばいた身まで薄赤く色づいているそうです。鯛=赤というイメージはここからきているのですね。ちなみに鯛は先ほども言ったように白身魚なのですが、その味は淡白ですがおいしく、特に江戸時代の江戸では五白などといい、味の薄い、上品なものが好まれたため、白身魚でなおかつ風味の良い鯛は江戸時代人気であったそうです。
また、意外なことに鯛はさばきにくい魚なんだそうです。もともと旬のおいしい鯛は体が大きく40~50センチ、重さは2~3キロあるくらいですから相当大きいのですよね。さらに鯛のひれは堅く、鱗もとりにくいと言います。そのため一般家庭ではさばきにくんですね。
ちなみに鯛の固い鱗では分厚く、年輪のように輪が刻まれています。この輪からその鯛の年齢を推測することも可能なのですが、実は鯛は20年~40年生きるのだそうです。有名な戦国武将の織田信長は「人生50年」と歌いましたが、鯛は下手をすれば実際に人間と同じくらい生きていたのかもしれませんね。