驚きの通販料理

ぐじの桜蒸し

いつも行く居酒屋は電車に乗らなければならないのでちょっと煩わしいと思っていた時のこと。
近所にちょっとした小料理屋と居酒屋の中間のような店ができていたのを思い出し、そこに行ってみることにした。
あまりにも近所なのでかえって行く機会を逃していたのだが、小ざっぱりとした和モダンな店内と、テーブル同士の間隔が広くて落ち着けるレイアウト。今まで来なかったのがちょっともったいない気がした。

海鮮が売りのお店らしくメニューを開くと刺身の種類は多いし、それ以外にも色々と魚介類を使った創作料理が書かれている。その中でひときわ目を引いたのが「ぐじ(甘鯛)の桜蒸し」だった。料理名からはどんな料理なのか判別がつかないが、風流なその名に惹かれて注文をしてみた。
しばらく待ったのちに運ばれてきたのは、見た目は完全な桜餅。
首を傾げながら箸先で餅を割ると、中からふっくらと蒸しあがったぐじが顔を出した。

刺身用のぐじを桜餅の生地に入れ、蒸したのだという。
桜餅のほんのりとした塩味と桜の葉の芳醇な香り。もちろんぐじの身も絶品だった。最低限の塩加減にしているようで甘みが強く引き立ち、柔らかな中にもきちきちと弾力のある歯ごたえ。
餅の柔らかさとぐじの弾力の組み合わせがまた面白く、あっという間に1つぺろりと食べてしまった。食べている間他のものには何一つ箸をつけなかったように思う。
この料理は家でも作れるのではないかと思っていたが、今のところその工程の煩雑さに負けて未だに作ったことはない。